中国弁護士・商標弁理士 姚 敏(Min YAO)
中国弁護士 陳 傑(Sai CHEN)
中国弁護士 陳 傑(Sai CHEN)
前書き
第35類役務は中国の商標登録分類の体系において特別な存在である。多くの企業は、その業務範囲を問わず、いずれも指定役務を第35類として、商標登録出願すべきであると考え、多くの代理人もお客様に第35類役務に関する商標登録出願を提案している。このような現象が生じているのは、現在、大部分の商品の卸売・小売役務がまだ中国商標登録の商品・役務分類に導入されていないことにより、出願人と一部の商標弁理士が第35類の役務内容の本質を取り違えていること、それに先取出願及び冒認出願が依然として深刻で、電子取引プラットフォーム及びショッピングモールなどからの強引な要求があることにより、出願人に指定役務を第35類として商標登録出願させることを加速させているからである。しかし、その経営業務に関わっていない第35類を指定役務として登録された商標が、3年不使用を理由として取消審判を請求されると、合法で有効な使用証拠を提供できないことにより、登録商標が取消されるという運命を免れない。
本稿では、下記3つの事件における人民法院の使用証拠に対する認定及びその理由を分析したうえ、第35類役務の本質及び商標使用の本質をさらに検討・研究する。商標登録者の第35類役務に対する認識及び登録商標の3年不使用取消審判事件に対する対応に少しでもご参考になれば幸いである。
◎事例分析
事件1:第6773892号“(赫尊HEZUN及び図)”登録商標の3年不使用取消審判に関する行政訴訟
● 基本情報
原告(商標権者):アモイ赫尊創意文化伝播有限公司
被告:国家工商行政管理総局商標審判委員会
第三者(3年不使用取消審判請求人):鄭汝華
一審人民法院:北京知識産権法院
一審の事件番号:(2016)京73行初3780号
一審判決期日:2018年4月25日
一審判決結果:係争登録商標取消審決の維持
● 事件概要
原告は、指定役務を「広告又は販売促進へのモデルのあっせん、広告デザイン、広告企画、データ通信ネットワークのオン・ライン広告、広告、商業・広告の展示企画、商業情報、販売促進(他人のため)、アーティストの出演の商業管理、職業のあっせん」として、係争商標を登録した。
第三者が係争商標に対して、3年不使用取消審判を請求したが、被告は係争商標を取消す審決を下した。原告は該審決を不服として、北京知識産権法院に審決取消訴訟を提起した。
原告は、行政段階及び訴訟段階において、その関連会社である「アモイ市思明区赫尊美髪職業訓練学校」(以下、「赫尊美髪学校」という)の係争商標に関する学校の宣伝冊子及び学員の集合写真、学校が展示会に出展した時の写真、教育認証書、係争商標をWeChat(微信)の公式アカウントのプロフィール写真として使用した資料及び美術著作物の登録証書などの使用証拠を提出した。
人民法院は、審理を経て、原告がその関連会社である「赫尊美髪学校」との許諾使用契約書などの証明資料を提出しなかったものの、実際に使用者による使用が商標権者の意志に反することなく、且つ係争商標が実際に商業活動において使用され、放置されていない状況では、実際の使用者による係争商標の使用を商標権者による係争商標への使用と見なすことができると認定した。
しかし、人民法院は、原告より提出された証拠では、係争商標が指定期間内で商標法上の使用をされたことを証明できないため、係争審決を維持した。
● 人民法院の観点
『類似商品及び役務区分表』における第35類役務への注釈によれば、第35類は、主に個人又は組織により提供される役務を含み、その目的は、「①商業企業の経営又は管理において行われる顧客に対する便益の提供、②工商企業の業務活動又は商業職能の管理において行われる顧客に対する便益の提供。それに、各種の伝播方式を利用して公衆に向けて広告を宣伝するための広告部門より各種類の商品・役務に対するサービスの提供」である。これによって、第35類役務は、主に他人のためにサービスを提供することであり、第35類における「広告」などの役務も自分のためではなく、他人の商品・役務のために宣伝を提供すべきである。本件において、赫尊美髪学校は係争商標を自分の美髪訓練学校の宣伝冊子、展示会、学員写真などに使用し、「他人のためにサービスを提供する」ということではなく、自らの訓練学校を宣伝するためである。したがって、上記の証拠によって、係争商標の使用が指定役務の第35類の「広告」などでの使用に該当することを証明できない。
● コメント:
『類似商品及び役務区分表』の第35類役務に対する注釈及び上述した人民法院の認定によると、第35類の「広告」役務は、他人の商品・役務のために広告宣伝のサービスを提供することが明らかになった。
実務において、いずれの経営者も、自分の商品・役務を宣伝し広め、市場シェアを拡大しようとするニーズがあるが、自ら又は自らが第三者に委託して、自己の商品・役務を宣伝し広める際に行われる商標の使用は、第35類の広告宣伝などの役務における使用に属さない。
事件2: 第5544635号「(万色WANSE)」登録商標3年不使用取消審判に関する行政訴訟
● 基本情報
上訴人(一審原告、商標権者):張利剣(個人工商者である
「万色百貨用品商店」の所有者)
被上訴人(一審被告):国家工商行政管理総局商標審判委員会
第三者(登録商標の3年不使用取消審判の請求人):才華煜
一審法院:北京知識産権法院
一審の事件番号:(2015)京知行初字第3758号
二審法院:北京市高級人民法院
二審の事件番号:(2016)京行終117号
二審判決期日:2016年6月30日
二審判決結果:係争登録商標取消審決の維持
● 事件概要
原告は、指定役務を「販売促進(他人のため)、貨物展示、広告、商業用のショーウィンドーのレイアウト、他人のためのあっせん(他の企業のために、商品又は役務を購入すること)、コンピューターデータベースの情報編集、ファイルの複製、輸出入の代行、オークション、商業管理の補助」として、係争商標を登録した。
第三者による3年不使用取消審判の請求に対して、被告は係争商標を取消す審決を下した。原告は、該審決を不服として、北京知識産権法院に提訴した。
原告は、行政段階及び訴訟段階において、店の設立記念イベント及び実体店の関連写真、一部分の代理契約書、その代理する商品写真、移動通信業務の使用合意及び移動通信会社によるインボイス、領収書及び税金納付証明、東陽市国家税務局の発行した領収書、東陽市万色百貨用品商店と資生堂(中国)投資有限公司が締結した化粧品売買契約及びその仕入書、納品書、契約金額の納付書、東陽市横店女人世界日化デパートの委託によりデザイン、プリントされた「万色WANSE」の付された封筒、便せんに関する契約書及び領収書などの商標使用の証拠を提出した。
審理を経て、一審人民法院及び二審人民法院のいずれも、上記証拠からは、係争商標が指定役務に使用されたことを証明できないと認定した。
● 人民法院の観点
『商標登録用商品及び役務国際分類』に第35類役務の主な目的は「商業企業の経営又は管理において行われる顧客に対する便宜の提供」、又は、「工商企業の業務活動又は商業職能の管理において行われる顧客に対する便宜の提供」であり、「特に、商品を販売することを主な職能とする企業、即ち商業企業の活動を含まない」ことにある。そのため、『商標登録用商品及び役務国際分類』第35類の役務項目は、「商品の卸売・小売」を含まず、ショッピングモール、スーパーマーケットの役務が当該35類の内容に属さない。「販売促進(他人のため)」という役務内容は、他人の商品(役務)を販売することにアドバイス、企画、宣伝、コンサルティングなどサービスを提供することである。したがって、原告側が提供した証拠は、係争商標が指定期間内に商標法上の商標の「使用」をされたことを証明できない。
● コメント
実際に、実務においてよく議論される卸売・小売役務及びスーパーマーケット、ショッピングモールによって提供される役務が「他人のための販売促進」に該当するか否かは、北京知識産権法院がその(2015年)京知民終字第1828号民事判決書においてその観点を詳しく述べたことがある。即ち、「他人のための販売促進」は他人の商品販売行為を幇助することであり、販売者の具体的な販売行為のために、1回だけの販売促進又はセールスサービスを提供する行為も、販売者の通常の販売行為に慣例的なサービスを提供する行為も含む。しかしながら、当該役務は、経営者「自ら」が販売主体として商品を販売する行為を含まない。卸売・小売役務のいずれも販売者が自分の名義で対外的に販売を行う行為であるため、「他人のための販売促進」という役務の範囲に属さない。ショッピングモール、スーパーマーケットの提供する役務が「他人のために販売促進」に該当するか否かは、具体的な状況に応じて識別する必要がある。ショッピングモール、スーパーマーケットなど自体が販売主体として対外的に商品を販売するものであれば、当該役務は「他人のために販売促進」に該当しない。それに対して、販売者がそのショッピングの場所における販売活動のために相応するサービスを提供するのであれば、「他人のために販売促進」に該当する。
本人民法院がこのように理解したのは、主に以下のことを考慮したからである。『類似商品及び役務区分表』にある「他人のための販売促進」は第35類役務に該当するが、2002年第八版の『分類表』には当該類の商品に対して、「特に……商品を販売することを主な職能とする企業、即ち商業企業の活動を含まない」という注釈がある。この注釈によれば、当該類別のいずれの役務も卸売・小売項目を含まないことが明らかであり、「他人のために販売促進」ということもその例外ではない。その後、2007年第九版の『区分表』では、当該注釈は削除されたが、この削除は、卸売・小売役務を第35類の登録以外に排除しないことを意味しているだけであり、当該類別の「他人のために販売促進」とう役務が卸売・小売役務を含むと理解すべきではない。特に、2013年以降、薬品小売類役務が第35類の項目に追加され、しかも『分類表』において、当該いくつかの類別の役務が「他人のために販売促進」と類似役務に該当しないと明確に記載されている情況で、上記のように理解すべきである。
上記の事件は、登録商標の3年不使用取消審判の行政事件ではなく、登録商標の権利侵害民事事件であるが、指定役務における商標使用に該当するか否かという問題についての認定基準はいずれも同様である。
更に遡ると、商標局の2004年の「商標申字(2004)第171号」の『国際分類第35類役務にショッピングモール、スーパーマーケットの役務を含むか否かの問題に対する返答』において、ショッピングモール、スーパーマーケットが商品を販売する企業に該当し、その主な活動は、卸売・小売である。また、『商標登録用商品及び役務国際分類』の第35類の注釈においても、当該役務の主な目的が「商業企業の経営又は管理において行われる顧客に対する便宜の提供」、又は、「工商企業の業務活動又は商業職能の管理において行われる顧客に対する便宜の提供」であり、且つ「特に、商品を販売することを主な職能とする企業、即ち商業企業の活動を含まない」ということを明確に説明している。したがって、『商標登録用商品及び役務国際分類』の第35類の役務項目は、「商品の卸売・小売」を含まず、ショッピングモール、スーパーマーケットの役務も当該35類の内容に該当しない。「販売促進(他人のため)」という役務内容は、他人の商品(役務)を販売するためにアドバイス、企画、宣伝、コンサルティングなどサービスを提供することである。
当該返答は実際に、ショッピングモール、スーパーマーケットの役務内容を第35類から完全に排除しており、前述の人民法院が司法事件において具体的な状況を区分して対応すべきであるという観点と完全に一致するとは言えない。
それに、「他人のために販売促進」に関する商標の使用を如何に認定すべきであるかについては、北京市高級人民法院が嘗て「知的財産権審判参考問答(17)」を発表した。そのうちの第3問及び第4問において、以下のようなショッピングモール、スーパーマーケットに関する役務の認定内容がある。これは前述した商標局の『返答』の観点に対する否定であると言える。
3、現在のビジネスモデル、経営方法の多元化という特徴を考慮したうえ、係争商標の商標権者がショッピングモール、スーパーマーケットなどの経営主体であるということだけを理由として、係争商標が「他人のために販売促進」という役務において、商標法上の商標の「使用」に該当しないと判断することを避けるべきである。
4、関連証拠に基づいて、ショッピングモール、スーパマーケットなどの経営主体が、場所を提供したりする形式によって、商品(役務)の販売代理店(提供者も含む)とビジネス提携協力を行っていることを証明でき、且つその提供した販売促進のポスター、企画案、刊行物による販売促進広告、コンサルティングサービスなどの関連証拠により、販売代理店(提供者も含む)の商品(役務)の販売にアドバイス、企画、宣伝、コンサルティングなどのサービスを提供したことを証明できれば、上述の行為は、係争商標の「他人のために販売促進」という役務における商標法上の商標の「使用」に該当する。
当該「参考問答」は司法解釈ではないが、北京市高級人民法院が登録商標の3年不使用取消審判に関する行政訴訟の終審法院として、その観点は、司法裁判の主流的な観点を明らかに代表していると言える。したがって、ショッピングモール、スーパーマーケットの商標の使用行為が必ずしも第35類役務の「他人のために販売促進」以外に排除されるわけではない。3年不使用取消審判を請求された場合、ショッピングモール、スーパーマーケットは、他の経営者に場所又は販売促進の企画サービスを提供する際に使用した商標使用証拠を提供すべきであることにも留意すべきである。
しかし、商標の有効性が維持できても、大部分の商品の卸売・小売役務が中国の商標登録商品・役務の分類体系に導入されていない状況において、スーパーマーケット、ショッピングモール、コンビニエンスストアなどの主体はどのように商標出願してその商標を確実に保護すればよいのであろうか。現段階の法律の枠組において、その商標登録出願は厄介な状況に直面していると言わざるを得ない。実際に、当該類の主体が商標登録を出願する際に、第35類にて出願せざるを得ないのである。なぜならば、第35類の「他人のために販売促進」という役務だけが、スーパーマーケット、ショッピングモール、コンビニエンスストアなどと少しでも関わっているのである。
2013年の『類似商品及び役務区分表』において、「薬品、医療用品の小売又は卸売役務」が第35類の3509単独の類似群として追加されたことにより、薬品、医療品の小売及び卸売業務の企業の商標登録・保護問題を適切に解決できるようになった。現在までに、薬品、医療用品以外の他の商品の小売・卸売役務はまだ区分表に導入されていない。昨今よく直面するスーパーマーケット、ショッピングモール、コンビニエンスストアなどの商標登録・保護問題を解決するために、中国で将来的に、他の商品の小売・卸売役務を第35類に徐々に導入するようになることも予測される。
事件3:第3803938号「雷博」登録商標の3年不使用取消審判に関わる商標行政訴訟事件
● 基本情報
上訴人(一審被告):国家工商行政管理総局商標審判委員会
上訴人(一審第三者、3年不使用取消審判の請求人):家園有限公司
被上訴人(一審原告、商標権者):香港雷博有限公司
一審法院:北京知識産権法院
一審の事件番号:(2016)京73行初3890号
二審法院:北京市高級人民法院
二審の事件番号:(2018)京行終269号
二審判決期日:2018年5月28日
二審判決結果:係争審決の取消し
● 事件の経緯
一審原告は、指定役務を「会計、監査、人事管理コンサルティング、人材募集、広告、広告企画、ビジネス管理コンサルティング、商業調査、コンピューターデーターベースへの情報編集、販売促進(他人のため)」として係争商標を登録した。
一審の第三者により、係争商標の3年不使用取消審判が請求され、一審被告は係争商標を取消す審決を下した。一審原告は該審決を不服として、北京知識産権法院に係争審決の取消訴訟を提起した。原告は、行政段階及び訴訟段階において、業務約定書及びインボイス、専業サービス招聘状及びインボイス、広告合意及びインボイス、刊行物における広告ページ、ホームページのキャッチアップ図など商標の使用証拠を提供した。これらの証拠で使用された商標標識は「LEHMANBROWN雷博國際會計」であり、原告の第6528061号登録商標と同一であった。
審理を経て、一審法院、二審法院のいずれも、原告が提供した証拠によって、係争商標の使用を証明できるため、係争商標の「会計、監査」という役務における登録を維持し、他の役務おける登録を取消すべきであると認定し、係争審決を取消す判示をした。
● 人民法院の観点
関連する広告宣伝に使用された「雷博國際會計」のうち、「國際會計」は役務性質の具体的な説明であると見なされやすいため、標識の組合せの形式及び構造から見れば、「雷博」(係争商標の内容)という2文字は、役務の出所を識別する役割を果たすことができ、商標法上の使用に該当し、しかもその役務内容が会計であることを示している。
関連する広告宣伝に使用された標識は、上述の第6528061号商標標識とほぼ同じであり、且つ当該商標の出願人が雷博公司であるものの、これは、中国の関連公衆が「雷博」という2文字を「会計」役務における商標として識別することに必ずしも影響を及ぼすわけではない。
商標権者の自らの使用、許諾による他人の使用及び商標権者の意志を反しない使用のいずれも、実際の使用行為に該当すると認定できる。本事件において、「雷博國際會計」という標識の関連広告宣伝の主体がいずれも雷博財務公司であることが体現されているが、当該公司が雷博公司と緊密な関係にある関連会社であるため、当該標識の使用は少なくとも雷博公司の意志に反していないと認定すべきであり、即ち、本件証拠により雷博公司の会計役務項目における係争商標に対する実際の使用を証明できる。
● コメント
上述の事例において、人民法院は、原告により提供された証拠がその「会計、監査」役務における実際の使用を証明できると認定したのは、原告が確かに第三者に会計・監査業務を提供する会社であり、その「会計・監査」役務における有効な使用証拠を提供できたからである。もし、会計・監査業務を提供する会社でなければ、会社内部に会計を専門とする職員がいて、内部の財務状況を会計・監査する業務に携わっていたとしても、当該業務における商標の使用は、第35類の「会計・監査」役務における使用とは認められない。
実際に使用された標識が登録商標と完全に一致しない当該状況に対して、人民法院は、実際に使用された標識における「雷博」という2文字が役務の出所を識別できる役割を十分に果たしているとして、商標法上の使用に該当すると認定した。原告が第35類の「広告、販売促進(他人のため)」などその他の役務における使用証拠を提供していないため、最終的には、係争商標の「会計、監査」役務における登録のみを維持できた。
◎ まとめ
1. 商標行政機関及び人民法院の第35類役務の本質に対する認定は明確であり、即ち、自己ではなく、第三者に関連サービスを提供することであり、特に「販売促進(他人のため)」役務は、自社の商品(当該商品が他人により製造されたものでも同じ)を経営販売する行為を含まないことである。
2. 実際に使用された標識が登録商標と完全に一致していない場合、関連公衆が依然として当該標識を関連役務の商標に識別することに影響を及ぼさなければ、この実際の使用を係争商標の使用と見なすことができる。
3. 商標権者による自らの使用、使用許諾による他人の使用、商標権者の意志に反しない他の使用のいずれも、実際の使用行為に該当すると認定できる。
4. 商標局は、上述した3つの事件に対して、商標登録者の提供した使用証拠をいずれも有効であると認定したが、商標審判委員会及び人民法院は、商標局とは異なる認定を下した。当所より取り扱った数多くの実際の事件からも、商標局が3年不使用取消審判の請求事件における使用証拠に対する審査を和らげているのに対して、商標審判委員会及び人民法院は厳しく審査・審理していることが分かる。しかも、商標局の段階において、商標登録者より提供された使用証拠に対して証拠調べ手続きがないので、商標局が相手側の当事者の証拠の質疑意見を聴取せずに審決を下すことは、偏った判断をする恐れがある。また、商標権付与・確定の行政訴訟事件において、係争審決の取消率の最も高い事件のタイプは3年不使用取消審判請求事件である。これらの事件の対応には、商標局が下した審決又は不服審判の審決が自分に不利である場合、当事者はぜひ積極的に救済措置を取るべきである。また、自分にとって有利である場合でも、決して油断しないで引き続き積極的に対応すべきである。なぜならば、商標局の審決又は不服審判の審決が究極の決定であるわけではなく、当事者はいずれも後続の救済プロセスを利用して結果を逆転させる可能性があるからである。
5. 登録商標の3年不使用取消審判は、商標登録者、3年不使用取消審判の請求人、商標審判委員会という三方に関わるため、その対抗性が強い。商標としての使用、商品及び役務、使用証拠の形式、証拠の効力、使用期限、使用主体などの問題がいずれも複雑な専門的な課題である。商標の共存を3年不使用取消審判請求人と交渉するのか、商標登録を改めて出願するのか、及びどのタイミングでこれらの措置を取るべきであるのかについては、いずれも事件の状況と利害関係を全面的に考慮する必要がある。しかも、これらの要素がその事件の結果に大いに影響する。したがって、上述のタイプの事件を対応する際に、よい結果を獲得するために、専門の知財弁護士に依頼するのが得策であると思われる。
参考資料:
1. (2016)京73行初3780号行政判決書
2. (2015)京知行初字第3758号行政判決書
3. (2016)京行終117号行政判決書
4. (2015)京知民終字第1828号民事判決書
5. (2018)京行終269号行政判決書
6. (2016)京73行初3890号行政判決書
7. 《類似商品と役務区分表》(2018版)
8. 『国際分類第35類役務のショッピングモール、スーパマーケットーの役務を含むか否かの問題に対する返答』http://sbj.saic.gov.cn/zcfg/sbgfxwj/200408/t20040815_232890.html
9. 北京市高級人民法院知識産権審判参考問答(17)