(法釈(2009)3号,2009年4月22日最高裁判所裁判委員会第1467次会議にて通過)

中華人民共和国最高裁判所公告

 「最高裁判所の著名商標の保護に関る民事紛争事件の審理における法律適用の若干問題に関る解釈」は既に2009年4月22日に最高裁判所裁判委員会第1467次会議にて通過した。ここに公布し、2009年5月1日より施行する。

2009年4月23日

 

 商標権侵害などの民事紛争事件の審理において、法により著名商標を保護するために、「中華人民共和国商標法」、「中華人民共和国不正競争防止法」、「中華人民共和国民事訴訟法」などの関連法律規定に基づき、裁判の実態に鑑みて、本解釈を制定する。

第一条 本解釈にいう「著名商標」とは、中国国内において関連公衆に周知されている商標をいう。

第二条 以下の民事紛争事件において、当事者がその商標が著名であることを事実根拠とする場合、裁判所は、紛争事件の具体的状況に基づき、確かに必要があると判断したとき、関連商標が著名であるか否かについて認定できる。

(一)商標法第13条の規定に違反したという理由で提起した商標権侵害民事紛争事件;

(二)企業名称がその著名商標と同一又は類似するという理由で提起した商標権侵害又は不正競争民事紛争事件;

(三)本解釈第6条の規定に該当する抗弁又は反訴された訴訟。

第三条 以下の民事紛争事件において、裁判所は、当該商標が著名商標であるか否かについて審査を行わない。

(一)被告の商標権侵害行為や不正競争行為の成立に際し、商標が著名であるか否かを事実根拠としない民事紛争事件;

(二)被告の商標権侵害行為や不正競争行為の成立に際し、その他の法律要件を満たさないため、成立しない民事紛争事件。

被告が登録又は使用したドメインネームが、原告の著名商標と同一又は類似であり、かつ当該ドメインネームを通じて関連商品の電子ビジネスを行い、関連公衆に誤認を生じさせたという理由で提起した権利侵害訴訟については、本条(一)項の規定によって審理する。

第四条 裁判所は、商標が著名であるか否かを認定するとき、当該商標が著名であることを証明する事実を根拠にし、商標法第14条に規定される各要素を総合的に考慮しなければならない。ただし、事件の具体的状況に基づき、当該条文が規定したすべての要素を考慮しなくても著名商標を認定できる場合はこの限りでない。

第五条 当事者は、その商標が著名であると主張するとき、事件の具体的状況に基づき、以下の証拠を提出し、被告の商標権侵害行為や不正競争行為が発生したとき、既に当該商標が著名であったことを証明すべきである。

(一)当該商標を使用する商品の市場におけるシェア、販売地域、利潤、税金額等。

(二)当該商標の継続的な使用期間。

(三)当該商標に関わる宣伝又は販売プロモーション活動の形式、継続期間、程度、資金投入及び地域範囲。

(四)当該商標が著名商標として保護を受けた記録。

(五)当該商標が市場において信望を有していること。

(六)当該商標が既に著名であったその他の事実。

本条にいう「商標の使用期間、範囲、形式などの事実」は当該商標が登録される前の継続使用の事実を含める。

 当該商標の使用期間、業界における順位、市場調査の報告書、市場価値の評価書、著名商標として認定されたことがあるか否かなどの証拠について、裁判所は、商標が著名であると認定するその他の証拠とを結合して、客観的かつ全面的に審査を行うべきである。

第六条 原告が被告の商標の使用は原告の商標権を侵害したという理由で提起した民事訴訟において、被告が原告の登録商標は被告の未登録著名商標を複製、模倣、翻訳したものであるという理由で抗弁し、又は反訴した場合、被告は当該未登録商標が既に著名であるという事実について挙証責任を負わなければならない。

第七条 商標権侵害又は不正競争行為が発生する前に、裁判所又は国務院工商行政管理部門に著名であると認定された商標について、当該商標が著名であるという事実に対して被告が異議を申し立てなければ、裁判所はそれを認定すべきである。ただし、被告が異議を申し立てた場合、原告は当該商標が著名であるという事実について挙証責任を負わなければならない。

本解釈において別途定めるものを除き、裁判所は商標が著名であるという事実について、民事訴訟における証拠の自認規則を適用しない。

第八条 中国国内で社会公衆に周知されている商標について、原告が、当該商標が著名である基本的な証拠を提出し、又は被告が異議を申し立てない場合、裁判所は、当該商標は著名であると認定するものとする。

第九条 著名商標を使用した商品と被告の商標を使用した商品の出所について関連公衆に誤認を生じさせ、又は著名商標を使用した事業者と被告の商標を使用した事業者の間に使用許諾や関連企業関係などの特定の関係があると十分に認められる場合、商標法第13条1項に定めた「容易に混同を生じさせる」ものに該当する。

被告の商標と著名商標との間にかなりの関係があると関連公衆に認められるため、著名商標の顕著性を弱め、著名商標の市場声望を貶め、又は著名商標の市場声望を不正に利用した場合は、商標法第13条2項に定めた「公衆に誤認を生じさせ、当該著名商標権者の利益に損害を与え得る」ものに該当する。

第十条 原告が被告の非類似商品における原告の著名な登録商標と同一又は類似の商標又は企業名称の使用の差し止めを請求する場合、裁判所は事件の具体的状況に基づき、以下の要素を総合的に考慮して判決を言い渡さなければならない。

(一)当該著名商標の顕著性;

(二)被告の商標又は企業名称が使用された商品に関る関連公衆における当該商標の著名度;

(三)当該著名商標を使用した商品と被告の商標又は企業名称を使用した商品との関連性;

(四)その他の関連要素。

第十一条 被告の登録商標が商標法第13条の規定に違反し、原告の著名商標を複製、模倣、又は翻訳したものであり、商標権侵害を構成する場合、裁判所は、原告の請求に基づき、法により被告が当該商標の使用を差し止めることについて、判決を言い渡すべきである。ただし、被告の登録商標が以下のいずれかに該当するときには、裁判所は原告の請求を支持しないものとする。

(一)商標法第41条第2項に規定した取消審判請求の期限を超えた場合

(二)被告が登録出願したとき、原告の商標がまだ著名でない場合

第十二条 当事者が登録されていない著名商標の保護を請求する際に、商標法第10条、第11条、第12条に規定された商標として使用又は登録できないものに該当する場合、裁判所は支持しないものとする。

第十三条 著名商標の保護に関る民事紛争事件において、裁判所は、商標の著名度に関る認定を事件の事実及び判決理由だけに記載し、判決主文には記載しないものとする。調停方式で審理が終了した場合、調停書においても商標の著名の事実について認定しないものとする。

第十四条 従前の本裁判所の関係司法解釈が本解釈と一致しないときは、本解釈を基準とする。

 

 公布日:2009年4月27日

出典:人民法院報