各省、自治区、直轄市高等裁判所、解放軍軍事裁判所、新疆維吾尔自治区高等裁判所生産建設兵団分院:

『最高裁判所による商標の権利付与権利確定に係る行政訴訟の若干問題に関する意見』を印刷し、配布するので、真剣に執行してください。

2010年4月20日

2001年12月1日より「全国人民代表大会常務委員会による「中華人民共和国商標法」を改正する旨の決定」が施行して以来、裁判所は、利害関係者が国家工商行政管理総局商標審判委員会による拒絶不服審判、異議再審審判、係争審判及び不使用取消再審審判などの具体的な行政行為に対して提訴するという商標の権利付与権利確定に係る行政訴訟を法により受理 審理し、関係法律の適用を積極的に探求した上、多くの裁判経験を積み重ねてきた。商標の権利付与;権利確定に係る行政訴訟をより効果的に審理し、裁判経験をさらにまとめ、審理基準を明確にして統一化するために、最高裁判所は前後してシンポジウムを数回開催し、特定テーマの調査;研究を数回行うことにより、関係裁判所、部門及び専門家や学者の意見を広く聴取したうえ、商標の権利付与権利確定に係る行政訴訟における法律の適用を研究してまとめた。それに基づいて、『中華人民共和国商標法』、『中華人民共和国行政訴訟法』などの法律や規定により、裁判のプラクティスを参照して、このような行政訴訟の審理について下記の意見を出す。

1.裁判所は、商標の権利付与権利確定に係る行政訴訟を審理するとき、大量に使用されていない係争商標について、商標や商品の類似性などの権利付与権利確定の条件を審査判断し、先行の商業標章との抵触問題を処理する場合、商標の権利付与権利確定を法により適当に厳しく把握し、消費者と同業経営者の利益を十分に考慮した上、不正の先取り出願行為を効果的に抑制し、他人が持っている高い知名度及び強い顕著性のある先行商標、企業名称などの商業標章の権益に対する保護を重要視し、商業標章を混同する可能性をできるだけ無くすべきである。使用期間が長く、高い声誉を持っており、かつ関係公衆の群体を有する係争商標について、先行の商業標章の権益への保護と市場秩序の維持を調和するという商標法の立法精神を正しく把握し、関係公衆が客観的に関係商業標章を区別できるという事実を十分尊重し、形成した且つ安定した市場秩序の保護を重要視すべきである。

2.実践中、ある標章又はその構成要素には誇大なことがあるものの、日常生活の経験或いは関係公衆の一般的な認識などに基づき誤解を招くには至らない場合、裁判所は誇大に宣伝し、かつ欺瞞性を帯びた標章と認定すべきではない。

3.裁判所は、関係標章がその他の不良な影響があるか否かを審査し判断するとき、当該標章又はその構成要素が我が国の政治、経済、文化、宗教、民族などの社会公共利益と公共秩序に消極的な影響を与えるか否かを考慮すべきである。関係標章の登録が特定の民事権益にのみ損害を与える場合は、商標法には別の救済方法及び関係手続が規定されているので、その他の不良な影響があると認定すべきではない。

4.商標法の規定によれば、県以上の行政区画の地名又は公衆に知られている外国地名は通常、商標として登録、使用してはならない。実践中、地名と他の要素からなる商標について、他の要素によって全体として顕著な特徴を有するようになり、地名の意味がなくなるか、又は地名を主な意味としない場合は、県以上の行政区画の地名又は公衆に知られている外国地名を含むことを理由として登録できないと認定すべきではない。

5.裁判所は、商標の権利付与権利確定に係る行政訴訟を審理するとき、係争商標の指定商品の関係公衆の一般認識に基づいて、商標は全体として顕著な特徴を有するか否かを全体的に審査し判断すべきである。標章にある描写的な要素は、商標の全体の顕著な特徴に対して影響がない場合、又は描写的な要素は独特な形式で表現され、関係公衆が商品の出所を識別できる場合、顕著な特徴を有すると認定すべきである。

6.裁判所は、商標の権利付与権利確定に係る行政訴訟を審理するとき、中国国内の関係公衆の一般認識に基づいて、係争の外国語商標が顕著な特徴を有するか否かを審査し判断すべきである。係争標章における外国語は固有の意味があるものの、関係公衆が当該標章に基づき商品の出所を識別できる場合は、顕著な特徴の認定に対して影響を与えない。

7.裁判所は係争商標が普通名称であるか否かを判断するとき、それが法定の商品名または社会に普及し定着される商品名に属するか否かを審査しなければならない。法的規定または国家基準、業界基準により商品の普通名称に属する商標は普通名称であると認定しなければならない。関係公衆はある名称が一種の商品を表すと一般的に認める場合、当該名称は社会に普及し定着される普通名称であると認定しなければならない。専門事典、辞書に商品名として収録されたものは、社会に普及し定着される普通名称の認定の参考になる。

社会に普及し定着される普通名称は、通常、中国全域以内の関係公衆の通常の認識を判断基準とする。歴史伝統、風俗習慣及び地理環境などの原因により、関係市場で形成された固有の商品が、当該関係市場で通用される名称は普通名称であると認定することができる。

出願人は、その登録出願商標が部分的な地域以内に、社会に普及し定着される商品名称であることを知っているかまたは知るべき場合、その登録出願商標は普通名称と認められなければならない。

8.裁判所は係争商標が普通名称であるか否かを判断するとき、一般的には、商標登録出願時の事実状態を基準とする。出願時に普通名称でないが、登録の時に既に普通名称となった場合、当該商標は本商品の普通名称であると認定しなければならない。出願時に普通名称であるが、登録の時に普通名称でない場合、当該商標の登録を妨げない。

9.ある標章は、単に又は主に、その使用商品の品質、主な原材料、機能、用途、重量、数量、製造地などの特徴だけを描写説明する場合、顕著な特徴を有していないと認定しなければならない。標章又はその構成要素は商品の特徴を暗示して、商品の出所の識別機能に影響を与えない場合、上述の状況に該当しない。

10.裁判所は、著名商標の保護に関する権利付与権利確定に係る行政訴訟を審理するとき、「最高裁判所の著名商標の保護に関る民事紛争事件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈」の第5条、第9条及び第10条などの関連規定を参照することができる。

11.中国で登録済みの著名商標について、非類似の商品において保護の範囲を確定するとき、その著名程度に適応することに注意すべきである。中国で社会公衆に周知される登録済みの著名商標について、非類似の商品において保護範囲を確定するとき、その著名程度に適応して、割に広い範囲の保護を与えるべきである。

12.商標弁理士、代理人または取次販売、代理などの販売代理関係上の代理人&代表者は、許諾を得ずに、自己の名義で被代理人または被代表者の商標を登録する場合、裁判所は、それは代理人代表者が被代理人被代表者の商標を先取りして出願する行為であると判断しなければならない。裁判のプラクティスでは、一部の先取り出願行為は代理代表関係の相談中の段階に発生する場合、すなわち、先取り出願が前に行われ、代理 代表関係が後に形成された場合、それは、代理人代表者の先取り出願行為と見なさなければならない。上記代理人代表者と共謀して先取り出願行為を行う商標登録出願人は代理人または代表者と見なすことができる。共謀して先取り出願するという行為は、状況に応じて、商標登録出願人と上記代理人または代表者との特定の関係などに基づいて推定することができる。

13.代理人または代表者が登録出願できない商標 標章は、被代理人または被代表者の商標と同一の標章のほか、類似の標章も含む。登録出願できない商品は、被代理人または被代表者の商標を使用する商品と同一の商品のほか、類似の商品も含む。

14.裁判所は商標権利付与 権利確定に係る行政訴訟を審理するとき、商品と商標の類似を判断する場合、『最高裁判所による商標民事紛争案件の審理における法律適用の若干問題に関する解釈』の関連規定を参考にすることができる。

15.裁判所は関連商品役務が類似するかどうかを判断するとき、次の基準を考慮すべきである。すなわち、①商品の機能、用途、生産部門、販売ルート、消費者などは同じであるか、又は関連性が大きいかどうか;②役務の目的、内容、手段、対象などは同じであるか、又は関連性が大きいかどうか;③商品と役務は関連性が大きいかどうか、商品と役務の提供者が同一であるか、又は提供者の間に特定の関連があると、関連公衆に容易に誤認させるかどうか。また、『商標登録用の商品及びサービスの国際分類表』、『類似商品及び役務の区分表』は類似商品又は役務を判断するときの参考になることができる。

16.裁判所は、商標が類似するかどうかを認定するとき、商標の構成要素及び全体の類似性を考慮すべきであるし、関連商標の顕著性及び知名度、使用商品の関連性などの要素も考慮すべきである。そして、容易に混同を生じさせることは判断の基準とすべきである。

17.商標法第31条の「商標の出願は先に存在する他人の権利を侵害してはいけない」という概括的な規定を正しく理解応用すべきである。裁判所は係争商標が先に存在する他人の権利を侵害するかどうかを判断するとき、商標法に特別に規定された先行権利について、商標法の特別な規定に基づいて保護を与える。商標法に特別な規定がないが、民法通則および他の法律の規定によれば保護すべき合法的な利益であれば、この概括的な規定に基づいて保護すべきである。

裁判所は係争商標が他人の先に存在する権利を侵害するかどうかを審理裁判するとき、係争商標の出願日を基点とするのは一般的である。先行権利は、係争商標の登録の時に、すでに消滅された場合は、係争商標の登録を妨げない。

18.商標法の規定によれば、出願人は不正手段で他人が既に使用しかつ一定の影響力を有する商標を先取りしてはいけない。もし出願人は、他人が既に使用し且つ一定の影響力を有する商標を知っている又は知るべきものの、他人の商標を先取りした場合、不正な手段を取ったと認定することができる。

中国国内に実際に使用されかつ一定の地域の範囲内で関連公衆に知られた商標は、すでに使用しかつ一定の影響力を有する商標と認定されるべきである。先行商標が一定の継続的な使用時間、地域、販売量又は広告宣伝などを有することを証明できる証拠があれば、一定の影響力があると認定することができる。

すでに使用しかつ一定の影響を有する商標は、非類似の商品に保護を与えるべきではない。

19.裁判所は登録商標を取り消す行政事件を審理する場合、係争商標が他の不正手段で登録したものであるかどうかを審理判断するとき、欺瞞的な手段以外の商標登録秩序を乱され、公的利益を損害し、公的資源の不正占用し、又は他の方式で不正な利益を図る手段に属するかどうかを考慮すべきである。特定の民事権益のみを侵害する場合、商標法第41条第2項、第3項および商標法のほかの規定を採用して審査判断すべきである。

20.裁判所は、三年不使用登録商標の取消に係る行政事件を審理するとき、商標法の関連規定の立法精神に基づいて、係る行為は実際の使用行為を構成するかどうかを正確に判断すべきである。

商標権者の自らの使用、他人に許諾する使用及び商標権者の意志に背かないその他の使用は、全て実際の使用行為と認定されるべきである。実際使用の商標は登録商標とわずかの差異があり、顕著な特徴が変わらない場合、登録商標の使用と見なすことができる。登録商標を実際に使用しておらず、譲渡、許諾行為、又は商標の登録情報の公布、或いは、登録商標の専用権の声明だけでは、商標の使用と認定されるべきではない。

商標権者は不可抗力、政策による制限、破産清算などの客観的な事由により、登録商標を実際に使用できないか又は使用停止するか、或いは、商標権者は、商標を使用する真実な意図を有しかつ実際使用の必要な準備をしたが、ほかの客観的な事由により登録商標を実際に使用していない場合は、すべて正当な理由があると認定されることができる。