(2001年6月5日最高人民法院審判委員会第1179期会議採択 法釈〔2001〕20号、2001年6月7日公布、2001年7月1日より施行)
特許権者及びその他の利害関係人の合法的権益を着実に保護する為に、「中華人民共和国民法通則」「中華人民共和国専利法」(以下専利法と略称)「中華人民共和国民事訴訟法」(以下民事訴訟法と略称)の関連規定により、現在、訴訟前に特許権侵害行為差止めの法律適用に関する若干問題について以下のように規定する。
第1条
専利法第61条の規定に従い、特許権者又は利害関係人は、訴訟前に被申立人の特許権侵害行為の差止めを命ずる申立を人民法院に提出することができる。
申立を提出する利害関係人とは、特許実施許諾契約の特許実施権者、特許財産権利の合法相続人などを言う。専用実施許諾契約の特許実施権者は、単独的に人民法院に申立を提出することができる。排他的実施許諾契約の特許実施権者は、特許権者が申立をしない場合に申立をすることができる。
第2条
訴訟前の特許権侵害行為差止めの申立は特許権侵害事件の管轄権を有する人民法院に提出しなければならない。
第3条
特許権者又は利害関係人は、人民法院に申立をする場合には書面申立状を提出しなければならない。申立状には当事者及び其の基本的状況、申立の具体的内容及び理由等の事項を明記しなければならない。申立理由には、関連行為を速やかに差止めない場合、申立人の合法的権益に補いがたい損害を与えることについての具体的説明を含めなければならない。
第4条
申立人は、申立をする場合に以下の証拠を提出しなければならない。
1、特許権者は、その特許権が真実且つ有効的なものであることを証明できる書類を提出しなければならない。特許証書、特許権利範囲書、明細書、特許年金交付証書を含める。申立が実用新案に係る場合に、申立人は国務院専利行政部門から出された検索報告を提出しなければならない。
2、利害関係人は、特許実施許諾契約及び其の国務院専利行政部門登録の関連証明資料を提出しなければならない。登録していない場合、特許権者からの証明又は権利を有しているその他の証拠を提出しなければならない。排他的実施許諾契約の特許実施権者は単独的に申立をする場合に、特許権者が申立を放棄した証明、特許権財産の相続人は相続した又は相続している証拠資料を提出しなければならない。
3、被申立人が特許権侵害行為を実施している又は実施しつつあることを証明する為に提出した証拠は、侵害製品及び特許技術と侵害製品の技術的特徴との比較資料を含めなければならない。
第5条
人民法院が訴訟前特許権侵害行為差止めについて下す裁定事項は、特許権者又は利害関係人が申立てた範囲に限られる。
第6条
申立人が申立をする場合には、担保を提出しなければならない。申立人が担保を提出しない場合には、その申立を拒絶する。
当事者が提出した保証、抵当などの担保が合理的、有効である場合には、人民法院は許可しなければならない。
人民法院は担保範囲を定める場合に、命ずる関連行為の差止めに係る製品の販売収入、及び合理的貯蔵保管料などの費用、被申立人の関連行為差止めにより、齎し得る損失及び人件費などの合理的費用支出、その他の要素を考えなければならない。
第7条
関連行為差止め裁定の執行中、被申立人がその措置の実施により更に大きい損失を被り得る場合に、人民法院は申立人に適当な担保の追加を命ずることができる。申立人は担保を追加しないときには、関連の差止め措置を解除する。
第8条
特許権侵害行為差止め裁定を実施する措置は被申立人の逆担保により解除されない。
第9条
人民法院は特許権者又は利害関係人が提出した特許権侵害行為差止めの申立を受領した後、審査を経て、第四条規定を満たす場合、48時間以内に書面的による裁定をしなければならない。被申立人の特許権侵害行為差止めを裁定する場合、被申立人の特許権侵害行為差止めを裁定したものについて直ちに執行しなければならない。
人民法院は前述した期間以内に関連事項について確認する必要がある場合、片方又は双方当事者を呼出、尋問した後、速やかに裁定することができる。
人民法院は訴訟前被申立人の関連行為差止め裁定を下す場合、速やかに被申立人に通知しなければならない。遅れても5日を超えてはならない。
第10条
当事者は裁定に不服がある場合、裁定受領日より10日間以内に不服を申立ることができる。不服申立中に裁定の執行を中止してはならない。
第11条
人民法院は当事者が提出した不服申立について、以下の項目を審査する。
1、被申立人が実施している又は実施しつつある行為は特許権侵害を構成するか否か。
2、関連措置を取らない場合、申立人の合法的権益に補いがたい損失を齎すか否か。
3、申立人の担保提供の状況。
4、被申立人に関連行為差止めを命ずることは、社会公共の利益に損害を与えるか否か。
第12条
特許権者又は利害関係人は、人民法院に関連行為差止め措置を取らせてから15日以内に提訴しない場合、人民法院は裁定、実施した措置を解除する。
第13条
申立人は提訴しない又は申立の過ちによって被申立人に損失を与える場合には、被申立人は管轄権を有する人民法院に提訴し申立人に賠償を請求することができる。特許権者又は利害関係人が提起した特許権侵害訴訟に損害賠償を請求してもよい。人民法院は合わせて処理することができる。
第14条
特許権侵害行為差止め裁定の効力は、通常、最終審法律文書が発効するまで維持する。人民法院は、事件によって、具体的期間を定めてもよい。期間を満了する時、当事者の請求により、引続き関連行為を差止める裁定をすることもできる。
第15条
被申立人が人民法院の関連行為差止めを命ずる裁定に違反する場合、民事訴訟法第102条規定に従い、処理する。
第16条
人民法院は、訴訟前特許権侵害行為差止め措置を実施する場合、当事者の申立により民事訴訟法第74条の規定を参照し、同時に証拠保全を行うことができる。
人民法院は、当事者の申立により民事訴訟法第92条、第93条の規定に従い財産保全を行うことができる。
第17条
特許権者又は利害関係人は、人民法院に特許権侵害訴訟を提出するとともに、先に侵害行為の差止めを請求する場合には、人民法院は先に裁定を下すことができる。
第18条
訴訟前特許権侵害行為差止め事件について、申立人は「人民法院訴訟費用徴収弁法」及びその補充規定に従い、その費用を納付しなければならない。