((93)経他字第20号、1993年8月16日に公布)
北京市最高人民法院
御院京高法[1992]143号「天津市東郊農牧場が特許侵害を理由に中国人民解放軍3608工場を相手に上訴した事件」に関する問題の質疑を受け取った。検討ならびに特許再審委員会への意見募集を経て、以下の通り回答する。
特許侵害訴訟において、人民法院は中国専利局が付与する有効な特許権を法律保護の対象として、その侵害当否を審査しなければならない。原告の特許権、もしくは原告、被告双方の有する特許権が特許性要件に合致するか否かについては、訴訟当事者が手続の取消、もしくは無効手続により解決を図るべきである。訴訟当事者が特許再審委員会に他方当事者の特許権の取消もしくは無効審判を求めなければ、人民法院は訴訟当事者の特許権の有効性を認めなければならない。
同様な製品、または類似製品に対して、個々の発明者に特許権を有することには以下の三つの場合がある。一、当該製品の発明創造における個々の発明者の発明内容が異なるものであり、技術方案に本質的な区別がある場合、二、後の特許技術が先行特許技術に基づいて改良され、先行特許技術に比して進歩性を有する場合。ただし、当該技術の実施は、先行特許技術の実施に基づくものである。したがって、これは従属特許に該当する。三、実用新案特許は実質的な審査を行わず権利が付与され、前後二つの実用新案特許の技術方案が同様或いは均等なものの場合、後の実用新案特許は権利付与の重複に該当する。
人民法院は特許侵害紛争事件の審理にあたり、特許法に規定されている先願主義に従い、原告が被告より先の出願の場合、原告の特許権の保護範囲に照らして、被告製品の主な技術的特徴が原告特許の保護範囲に完全に重複するかどうかを審査する。概ね、前述した第一の場合は、被告発明の技術方案と原告発明の技術方案に本質的な区別が見られるため、被告の侵害は成立しない。その他の二つの場合は、被告が先行特許の特許権者の許諾を得ずに従属特許を実施するために、先行特許技術の実施に該当し、他方は、前後二つの実用新案特許の技術方案が同様或いは均等であるため、被告は、重複権利の特許技術の実施に該当するため、原告の特許権に対する侵害が成立する。したがって、人民法院は被告に特許を有することのみを理由に、特許侵害の成立に関する分析や判断を行わず、原告の訴訟請求を却下してはならず、被告が有する特許権における具体的な状況および原告の特許権との関係を検討したうえで、侵害の有無を判断しなければならない。