2023年3月30日、最高人民法院は「最高人民法院知識産権法廷年度報告(2022)」、「最高人民法院知識産権法廷典型事例(2022)」及び「最高人民法院知識産権法廷裁判要旨(2022)」を公表した。
このうち、「最高人民法院知識産権法廷裁判要旨(2022)」は、最高人民法院がその知識産権法廷による技術系の知的財産権事件と独占事件の審理における司法理念、審理の考え、裁判方法を集中的に示すために、2022年に結審した3468件の事件から、61件の典型事例を精選し、75条の裁判要旨を作成したもので、大きな参考意義と研究価値がある。
弊所が代理したアンテナ装置の発明特許に関する審決取消訴訟((2021)最高法知行終987号)が同「裁判要旨(2022)」に選出された。
本事件も特許権侵害訴訟に関連しており、弊所はその権利侵害証拠の収集、侵害訴訟の対応、関連の無効審判及びその後の審決取消訴訟を一括して代理している。
本事件では、侵害訴訟に対応するために、被疑侵害者は国家知識産権局に無効審判を請求し、必須要件欠如、新規事項追加、明確性要件違反及び進歩性欠如等を含む複数の無効理由を挙げていた。これらの無効理由に対して、弊所の担当弁護士と特許権者は十分に意見交換した上で、効果的に対応してきた。国家知識産権局は2018年11月21日に、特許請求の範囲の訂正を認めた上で、対象特許の権利を有効とする旨の審決を下した。
無効審判請求人は不服として、必須要件欠如及び進歩性欠如を理由に、北京知識産権法院に審決取消訴訟を提起した。北京知識産権法院は審理を経て、請求項1には進歩性が認められるものの、対象特許の独立項1は必須要件が欠如すると判断し、審決を取り消す旨の判決をした。
当方と国家知識産権局は一審の判決を不服として、最高人民法院に上訴を提起した。
上訴資料を準備した際に、弊所の担当弁護士は特許権者と何度も打ち合わせを行い、反論の理由を繰り返し議論した。二審では、争点をめぐり、さまざまな角度から反論を述べた。
その結果、最高人民法院知識産権法廷は当方の理由を認めてくれて、一審判決を取消す二審判決を下した。特に二審判決では、必須要件欠如の判断について、裁判要旨を以下のようにまとめたものがあり、今後の審査と審判に対して重要なガイダンスとなる。
独立項は必須要件が欠如するかを判断するにあたって、明細書に記載された発明の目的等の内容も考慮し、請求項の合理的な解釈に基づいて結論を出さなければならない。当業者は特許請求の範囲、明細書及び図面を読んで独立項を合理的に解釈しても、発明が解決する課題を解決できないと判断する場合のみには、独立項は必須要件が欠如すると考えられる。
また、本事件は、国内外の権利者の合法的権利が平等に保護された一例として、「最高人民法院知識産権法廷年度報告(2022)」に評価された。