――独立項は必須要件が欠如するかを判断するときの課題及び請求項の解釈について
 
中国特許法実施細則第20条第2項の規定によれば、独立請求項には、発明又は実用新案の技術を全体から反映し、技術的課題を解決するための必須要件を記載しなければならない。しかしながら、必須要件とは何なのか、少なくともどの程度に記載しなければならないかについて定めがない。中国審査指南にも、明確な定めがない。さらに、この法条は、サポート要件違反、明確性要件違反等とは法条競合の関係にあるため、審査実務では、この法条をどのように適用すべきかについて様々な議論がある。

最近、弊所が代理した無効審判の審決取消訴訟は二審で勝訴した。裁判所は判決において、「必須要件欠如」の立法趣旨が明らかにされ、独立項が必須要件を有することを求めるのは、請求項の記載の適正化を図ることを意図していると記載された。また、判決には、下記記載がある。当業者は、請求項の合理的な解釈に基づいて、課題を解決するためのすべての必須要件を有することを判断できる場合、出願人が独立項に構成要件をさらに詳しく記載しなかったことのみを理由に特許権を付与しないと、出願人の特許出願書類の作成に対する要求と出願人のイノベーション程度とは合致せず、発明創造を奨励する特許法の立法趣旨に反することになってしまう。社会公衆が課題を解決するために請求項に係る発明を実施できないか、又は請求項の権利範囲が技術的貢献程度に合わないと考える場合、特許法の他の法条から解決策を探すことができる。判決の上記判断は、今後の審査及び審判に重要な指導的な意義があるといえる。

本件について、対象特許の特許権者は、まず、A社に対して特許侵害訴訟を提起することを依頼いただいた。その後、A社から、対象特許に関して無効審判を請求された。

無効審判請求書を受領後、弊所は迅速に検討会を行い、無効審判請求書に記載された必須要件欠如、新規事項追加、明確性要件違反及び進歩性欠如等を含む無効理由を一々で検討し、クライアントと数回意見交換した上で、有効審決を目指し特許侵害訴訟の侵害判定に悪影響を及ぼさないように、特許請求の範囲を訂正する方針を固めた。

中国特許庁は、特許請求の範囲の訂正を認めた上で、対象特許の権利を有効とする旨の審決を下した。

その後、無効審判請求人は審決取消訴訟を提起した。一審では、主な争点は、必須要件欠如及び進歩性にある。一審裁判所は、対象特許の独立項は必須要件が欠如すると判断して、審決を取り消す旨の判決をした。

特許権者及び中国特許庁の両方とも一審判決を不服として控訴した。二審では、対象特許は必須要件が欠如しない理由を各観点から説明した。

その結果、最高裁判所の知的財産法廷は当方の理由を認めれくれた。二審判決では、必須要件欠如の判断について、下記2点を明らかにした。

(1)独立項は必須要件が欠如するかどうかの判断は原則として、明細書に記載された発明が解決する課題のみに基づいて行われなければならない。発明が解決する課題を解決するために必要不可欠な技術的手段は、必須要件に該当する。

(2)独立項は必須要件が欠如するかを判断するにあたって、明細書に記載された発明の目的等の内容も考慮し、請求項の合理的な解釈に基づいて結論を出さなければならない。当業者は特許請求の範囲、明細書及び図面を読んで独立項を合理的に解釈しても、発明が解決する課題を解決できないと判断する場合のみには、独立項は必須要件が欠如すると考えられる。