近日、北京市高級人民法院は、弊所代理のパナソニック株式会社(以下、「パナソニック社」という)が被告の珠海金稲電器有限公司、中山市金稲電器有限公司(以下、「金稲社」という)、被告の北京麗康富雅商貿有限公司(以下、「麗康富雅社」という)を訴えた「スチーマー」に係る意匠権侵害紛争事件の二審判決を下した。
 
金稲社は、2013年から、パナソニック社の登録意匠(ZL201130151611.3)に係る物品であるKD2331のスチーマーを大量に製造、販売、宣伝し始めた。2014年、パナソニック社はECプラットフォームにて金稲社の被疑侵害製品に対して何回もクレームをしたが、金稲社の侵害行為をさしどめることができなかった。2015年2月に、パナソニック社は北京知識産権法院に意匠権侵害訴訟を提起した。北京知識産権法院は、2015年11月に、金稲社が製造したKD2331がパナソニック社の本件意匠の権利範囲に属すると判断し、金稲社がパナソニック社主張の経済損失額300万元及び訴訟の合理的支出20万元の全額を賠償するよう命じる(2015)京知民初字第266号民事判決書を言い渡した。金稲社は一審判決に対して不服があり、上訴した。北京市高級人民法院は、2016年12月に一審判決を維持する旨の(2016)京民終245号民事判決書を言い渡した。本事件は北京市高級人民法院により2016年度北京市法院知識産権保護10大典型事例に、最高人法院により2016年度中国法院10大知識産権事件に選出され、中国国内外の広範囲で注目を浴び、大きな社会的影響力を持っている。
 
しかし、上記判決が発効された後、金稲社は侵害行為を停止しておらず、KD2331の販売を続けるどころか、製造規模を拡大し、KD2331の意匠に非常に類似するKD2331(元KD2331と微差がある)、KD2331A、KD2331Sの3種のスチーマーを発売し始めた。パナソニック社はやむを得ずに、2017年6月に再び北京知識産権法院に意匠権侵害訴訟を提起し、経済損失額500万元及び合理的支出20万元の賠償を主張した。北京知識産権法院は2020年6月に、金稲社が製造したKD2331、KD2331A、KD2331Sなどの3種のスチーマーがパナソニック社の本件意匠の権利範囲に属すると判断し、金稲社が経済損失額450万元、麗康富雅社が経済損失額5万元及び金稲社、麗康富雅社2社が訴訟の合理的支出15万元を賠償するように命じた(2017)京73民初1156号民事判決書を言い渡した。各方当事者は一審判決に対して不服があり、上訴した。北京市高級人民法院は2021年6月に、一審判決を維持する旨の(2020)京民終801号民事判決書を言い渡した。
 
本件において、侵害行為が発生した時点、特許権侵害に係る懲罰的賠償制度がまだ導入されていなかったため、懲罰的賠償の適用ができなかった。弊所が数回に保全された証拠物である被疑侵害品の販売データに基づき、被告の権利侵害の悪意、侵害行為の継続期間、販売数量と利益などを強調した結果、法院は最終、弊所の主張を考慮し、(2016)京民終245号民事判決書に言い渡された賠償額より高い賠償額を認め、侵害者に対する打撃効果を見せた。

日時:2021年6月
出所:北京魏啓学法律事務所